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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)2785号 判決 1954年12月17日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人寺井俊正の上告趣意第一点について。

刑訴法三二一条一項二号但書に規定する「公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況」の判断は事実審の裁量認定に関する事項であり(昭和二六年(あ)一一一一号同年一一月一五日第一小法廷判決、集五巻一二号二三九三頁参照)またその理由を判決に明示することを法律上要求されているわけではないから所論判例違反の主張は既にその前提において採用できない。

同第二点について。

所論は、本件につき強盗致死罪の訴因に対し訴因罰条の変更の手続を経ないで傷害致死罪を認定した一審判決を是認した原審の判決は高等裁判所の判例に背反するというのであるが、元来訴因又は罰条の変更につき一定の手続が要請される所以は裁判所が訴因又は罰条を異にした事実を認定することによって被告人の防御権行使の機会を失わしめ又はこれを徒労に終らしめることを防止するにあるところ、本件において強盗致死罪の訴因に対し、財物奪取の点を除きその余の部分について訴因に包含されている事実を認定し、これを傷害致死罪として処断しても右のような虞れはないと考えるから、この点に関する原審の判断は正当である。論旨引用の各判例はいずれも本件に適切でなく所論は採用できない(昭和二六年(あ)第七八号同年六月一五日第二小法廷判決、集五巻七号一二七七頁参照)

同第三点について。

記録によると原審は弁護人寺井俊正の第一回公判期日の変更申請を許容したところ更に第二回公判期日の変更申請があったがこれを許容せず国選弁護人を選任し右弁護人は曩に私選弁護人が提出した控訴趣意書に基づき陳述をなし審理を終結したことが判る、所論は私選弁護人がある場合に裁判所が国選弁護人を選任する法的根拠がないというけれども、本件のような必要的弁護事件において弁護人が出頭しないときは裁判所は職権で弁護人を附すべきものであるから右の非難は当らない(刑訴四〇四条、二八九条参照)。従って刑訴法の違反を理由とする所論違憲の主張はその前提を欠くものである(昭和二五年(あ)三一一七号同二七年七月八日第三小法廷判決参照)。

同第四点について。

本件国選弁護人の選任が適法であることは論旨第三点につき説明したとおりであるから被告人にこの費用の負担を命じた原審判決は正当であり引用の判例は本件に適切でない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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